転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

ニコリともしない父親のぶっきらぼうさに内心呆れるものの、サマラは満面の笑みを浮かべてみせる。

「おとーさま、すごい! 私はウナギのゼリーがどうしても苦手なんです。でもおとーさまを見習って、食べられるように頑張りますね」

サマラがそう言った瞬間、カレオが口もとを手で押さえブフッと噴き出した。

「大丈夫ですよ、サマラ様。閣下も俺もアレは苦手ですから。無理して食べることないです」

「えっ、そうなの?」

驚いたサマラがディーの顔を見ると、彼はカレオをひと睨みしてから眉間に思いっきり皴を寄せて言った。

「苦手じゃない。日によって少し喉を通りにくいこともあるが、苦手なわけじゃない」

クールだと思っていたディーが苦しい言いわけをするのを聞いて、今度はサマラが噴き出しそうになる。

(何それ! 新情報! ディーがウナギのゼリーが嫌いだなんて、ファンブックにも載ってなかったよ!)

けれどここで笑ってしまっては父の威厳を傷つけてしまうと思い、サマラは危うく噴き出してしまいそうになるのをグッとこらえると、「じゃあ、おとーさまもウナギのゼリーがおいしく食べられるように、一緒に頑張りましょう」と出来るだけ柔和な笑みを浮かべた。

ディーは引き結んだ口をモゴモゴとさせ何か言いたげだったが、「ふん」と短く吐き捨てると席を立ち、ナプキンで乱暴に口を拭ってから晩餐室を出ていってしまった。

「え……」

(嘘、怒った!? 気遣ったつもりだったんだけどプライド傷つけた? や、ヤバい!)

選択肢を間違えただろうかと焦ってドアを見つめるサマラに、カレオが「大丈夫ですよ」と優しく声をかけてきた。

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