転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

「閣下もきっと、サマラ様とお喋りしたいと思ってますよ」

カレオのパールグレーの瞳がまっすぐにサマラを見つめる。男らしさと優しさを兼ね備えたカレオの魅力に、サマラは危うくときめきそうになった。

（っっかぁ～～！！　イケメン！　イケメンすぎるよカレオ！　さすが攻略対象！　さすが『面倒見のいい優しいお兄ちゃん枠』キャラ！　魅力半端ね～～！！）

乙女ゲームマスターだった頃の本能が心の中で七転八倒する。もし自分がプレイヤーだったなら遠慮なく頬を染められるのだが、今は『友人の娘（五歳）』という立場だ。不審にならないようサマラは必死で冷静に振舞う。

「ありがとう、カレオさま。食事が終わったらおとーさまのところへ行ってみるね！」

腹に色々と抱えた五歳児の無邪気を装った笑顔に、カレオは疑いの目を向けることもなく「それがいいです！」と頷いてくれた。



食事が済むと、サマラはディーがいるという居間へ向かった。扉をノックする前に深呼吸をする。

（カレオは、ディーが私とお喋りしたいって言ってたけど……本当かな。晩餐のときの様子だと、あまり会話を楽しもうとしているようには見えなかったけど）

少し悩んだが他に手立てもない。このまま無策でいても無駄に時間が過ぎていくだけなので、サマラは当たって砕けろの精神で扉をノックした。

「おとーさま、サマラです。入ってもいい？」

沈黙は十五秒ほど続いた。サマラがイラっとしながらもう一度ノックしようと手を振りかぶったとき、ようやく部屋の中から「入れ」と低い声がした。