転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
ふたりはドレスの裾を抱えて走ってくるサマラを見てギョッとした。そして転げそうになりながらサマラがディーの前まで行くと、ディーは「どうした。そんなに慌てて」と、しゃがんで目線の高さを合わせてくれた。

「あのね……あのね、おとーさま。昨日はおとーさまと一緒にたくさん過ごせて嬉しかったよ。初めて抱っこしてもらって、すごく嬉しかったよ。妖精に会わせてくれて、嬉しかったよ! だから、ありがとうございますって言いたくて……」

夢中で走ってきたからだろうか、息が切れて頭もうまく回らない。上手に言葉が出てこないのをもどかしく思いながら、サマラはしゃがんでいるディーの首にしがみつくように抱きついた。

「おとーさま、またサマラのとこに帰ってきてね。お手紙書くから、お返事書いてね。サマラのこと忘れないで……」

小さな子供にとって親との別れはこんなにつらいものだったのかと、サマラは痛感する。
生まれて数ヶ月で離れ離れになり、顔も覚えていなかった父親なのに。血も繋がっていないのに。たった半日一緒に過ごした父親がこんなに大好きで仕方ない。離れたくない。

(ディーの馬鹿馬鹿! こんな小さい子に寂しい思いさせるんじゃないわよ!)

本心ではそうなじってやりたいのに、寂しくて寂しくて涙が止まらない。

「うぅ~~、うわ~~ん」

ディーにしがみついてグズグズ泣いていると、大きな手が宥めるようにポンポンと背中を叩いてくれた。そしてディーはそのままサマラを抱き上げて立ち上がる。

「……よく泣くな。昨日も泣いていただろう」

「だって、だって……」

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