転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
ディーと再会してからこんなふうに子供らしいおねだりをサマラがするのは初めてだ。娘のおねだりを初めて目の当たりにし、ディーはなやましげに目を瞑って大きくため息を吐きだす。

「……ニクスは人好きだが、悪戯で人に害を及ぼすこともある。特に気に入った女を水の中へ連れ去ってしまうことが多々ある。……どうしてもそいつを連れ帰りたいというのなら、使い魔契約をしろ。そうすればそいつはお前に害を与えられん」

「……使い魔……。えぇっ!?」

サマラは驚いた。まだ魔力が低すぎて魔法も使えないというのに、先に使い魔契約をするなんて思わなかった。

「で、出来るんですか? 私に? ろくな魔力もないのに?」

魔力の低い者を妖精は見下す習性がある。ましてや使い魔の契約なんて、普通は結んでくれるわけがない。

「それだけ好かれているのなら大丈夫だろう」

ディーはそう言ったが、サマラは半信半疑だ。ニクスの子の灰色の瞳を見つめながら、「私なんかでいいの?」と尋ねる。
するとニクスの子は嬉しそうに口に弧を描き、サマラにしがみついたまま何度も頷いて見せた。

(うっ、可愛い……! 母性本能キュンキュンくる……!)

ニクスは美しい水の妖精だ。幼体であってもその魅力は強い。躊躇していたサマラも、(最初の使い魔がこんな可愛い子だなんて……最高じゃない?)とその気になっていく。

「じゃあ契約しちゃおっかな……なんて」

不純な動機を隠すように微妙な笑みを浮かべながら言えば、ディーはすぐに契約の仕方を教えてくれた。
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