転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
特別な道具や場所はいらない。魔力と血を結び、契約の言葉を唱え、使い魔に名前を与えることで完了する。
サマラの魔力は低かったが、ニクスはよほどサマラを気に入っていたのだろう。契約は一回で成功した。

「マリン」

サマラはニクスの子にマリンと名付けた。『海の街で出会ったからマリン』という安直すぎる理由だが、口に出してみると悪くない響きだった。

呼びかけられたマリンが、嬉しそうに喜色満面になる。

「サマラ！」

初めて名前を呼んだマリンを、サマラは愛しさでキュンキュンしながら抱きしめた。

「可愛い、マリン。これからは私がおねーちゃんだよ。よろしくね」

もはや主人ではなく姉の気分でマリンに頬ずりするサマラを、ディーは複雑そうな表情で見やりながら首に青い石のネックレスを掛けてくれた。

「月の光を百年浴びた泉の水を魔法で結晶にしたものだ。連れ歩くならこれに入れておけ」

結晶を見たマリンが目を輝かせ、吸い込まれるようにその中へ入ってしまう。サマラは「わっ」と驚いたが、結晶の中を覗くと嬉しそうにマリンが泳ぐ姿が見えた。心地いいようだ。

「手を繋いで一緒に歩きたかったなあ」

残念そうにサマラが呟くと、ディーは火の精を数匹召喚しながら言った。

「お前が常にずぶ濡れになりたいならそうするんだな」

それを聞いて、サマラは自分のドレスがビショビショなことに今さら気がついた。ニクスの手は常に水に濡れているのだ。

火の精でドレスを乾かしてくれるディーに、サマラは面目ない気分で「ありがとうございます……」と礼を述べた。


< 60 / 200 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop