転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
おそらく、大きな問題でも起きなければこれから先もずっと生活を共にするだろう。ふたりきりの家族なのだ。本来ならばそうするのが正しい。

サマラは自分とディーの関係がようやく普通の父子まで修復されたことを密かに、けれど心の中で盛大に喜んだ。これならば十六歳の破滅イベントが訪れても、生き延びられるかもしれない。
サマラの死因は魔人の暴走に巻き込まれることだ。けれどディーが人並みに娘を愛しているならば、サマラの危機を放ってはおかないだろう。彼ならばサマラを魔人から守ることぐらい朝飯前のはずだ。

それに加え、サマラはディーと暮らせるのが単純に嬉しかった。彼が娘にどれほど愛情を持っているかはわからないが、サマラはもうディーへの家族愛がしっかり根付いている。

そんなわけで父との新しい暮らしに胸躍らせながら、サマラは王都へ向かう馬車に乗り込んだ。アリアン州から王都バリアラまでは馬車で約一ヶ月。
けれどディーは途中の運河で船に乗り換え、水の精を使って猛スピードで川を下っていくので、わずか三日で着く。

「おとーさま、王都ってどんなところですか?」

馬車の中で無邪気に尋ねるサマラに、ディーは少し考えてから口を開いた。もはや日常会話のテンポが鈍いことにもすっかり慣れた。

「人が多い。建物も多く活気もあるが……代わりに妖精が少ない」

妖精は自然を好む。人の手が入った建築物の多い街は、おのずと妖精が少なくなるのだ。

「ちょっと寂しいですね。……妖精が少なくても、ちゃんと魔法使えるようになるかな」

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