転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
魔法の勉強を始めて四ヶ月。知識の方はだいぶ増えたが、いかんせんサマラの魔力はなかなか強くならない。おかげで未だに四大精霊の力を借りられるような魔法は使えていなかった。

(やっぱり血筋かなー。もしこのまま魔力が増えなかったらどうしよう)

サマラは自分の小さな手を見つめながら、そんなことを思った。
魔力は完全に遺伝だ。魔法使いは魔法使いからしか生まれない。しかも突然変異で魔力を持たない子が生まれることもあるので、年々魔法使いは減る一方だ。
サマラの母、ナーニアも魔法使いだった。ディーはもちろん、屋敷の者も誰もナーニアのことは語ってくれないので、彼女がどれほどの魔力持ちだったかはわからない。
しかしサマラの魔力を鑑みるに、あまり強くはなかったのは明白だろう。
父親に至っては魔法使いなのかどうかさえ知らない。

「大丈夫だ。俺が訓練してやる。お前の魔力はまだ伸びしろがある」

不安になっていたサマラの気持ちを、ディーの言葉が晴らしてくれる。
サマラが嬉しそうに「はい」と微笑むと、隣に座るディーは表情を変えないまま頭を撫でてくれた。

(……そういえば、ナーニアもディーの弟子だったんだっけ)

それは『魔法の国の恋人ファンブックvol.3』に載っていた情報だ。
ふたりの出会いは魔法研究所、ディーが十七歳でナーニアが十六歳のときだった。
学校というもののないこの国では貴族の子供は家庭教師に勉強を教わり、十六歳になったら自分の就きたい仕事場で二年間弟子入りするのが習わしだ。
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