転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
ナーニアを真剣に愛していたディーは深く傷つき絶望した。もともと人嫌いな性格ではあったがそれを加速させ、ほとんど人との交流をしなくなってしまった。それはサマラに対しても同じで、彼がベビーベッドを覗くことはなくなった。
そして三ヶ月後。ディーはまだ赤ん坊のサマラを領地の館に残し、自分は魔法大臣として働くために王都へと旅立ち――五年間、帰ってくることはなかった。
サマラに罪はない。それはディーもわかっていたが、ナーニアの面影が残るサマラと向き合うことに耐えられなかったのだ。
彼は償いの代わりにサマラにはとことん贅沢を許した。王国の魔法協会の権威である彼には生涯かかっても使いきれないほどの財産がある。子供の贅沢など痛くも痒くもない。
しかし父の許しを得て贅沢三昧を繰り返したサマラは当然わがままになり、母にも父にも見捨てられ自己肯定感を見出せなかったせいもあって、彼女の性格はどんどん歪んでいってしまう。
そしてわがままで努力嫌いで嫉妬深く、他人の不幸を喜ぶような性格になった血の繋がらない娘を、ディーはますます嫌悪した。最悪の悪循環である。
そんな理由でディーはサマラと離れて暮らすようになり、彼女が十六歳になるまで領地の屋敷に帰ってきたのはたったの一回だけである。
――というのが、『魔法の国の恋人ファンブックvol.2』に収録されていた情報である。
(……つまりその一回って、今日のことよね。ということはこれを逃せば、もうディーに会う機会は十六歳までない……!)