転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
有名人の宿命とはいえ、サマラはさすがに居心地が悪い。彼と全く似ていない赤い髪を隠したくなってしまう。

（やだな。『あれが噂の娘だ』とか『本当に全然似てない』とか思われてるんだろうな）

良くない注目に辟易としてきたとき、研究所の一番奥にある所長室へついた。扉を開けた途端、さっきまでの気持ちが吹き飛ぶような清涼な空気に包まれ、サマラは目を瞠る。

「ここが俺の部屋だ」

抱っこから降ろされて、サマラは辺りを見回し、自分の顔が綻んでいくのがわかった。
部屋は妖精たちの光で溢れ、ディーとサマラを歓迎する空気に満ちている。
風の精が舞い、水の精が躍り、木と花の精が花びらを降らせる。火の精が煌々と部屋を明るくし、貴婦人の姿をした家事妖精が微笑んで恭しく立っていた。

「ディーだ！　ディーが帰ってきたよ！」
「小さな女の子も一緒だ！」
「夕焼け色の髪よ、なんて素敵なの」
「ちっちゃいけど、とっても気持ちのいい魔力を持ってるよ」

賑やかな妖精のお喋りは、鈴の音のように心地よくサマラの耳に届く。

「すごい……どうしてこんなに妖精が？」

うっとりとしながらサマラが尋ねれば、ディーは部屋の窓を大きく開け放ちながら言った。

「この部屋は一番森に近い。それに普段から妖精の好む香を焚いたり、蝋燭を灯したりしているから居心地がいいのだろう」

言われてみれば確かに、火水土風の精霊を祭る祭壇が部屋にある。これは自然から遠い場所で妖精を呼び出したり、魔法使いの初心者が妖精とコンタクトをとるために使うものだ。ディーほどの魔法使いなら必要ないと思われるが、彼なりの妖精への敬意の表れなのだろう。

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