転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
「気に入ったならそれでいい。さあ、休憩したら魔法研究所へ行くぞ」

そう言ってサマラを抱っこしたまま一階に向かう彼の足取りが、いつもより弾んでいるような気がしたのはサマラの気のせいだろうか。


お茶を飲んでひと休みしたあと、サマラはディーに連れられて魔法研究所と自然公園へと向かった。
国王への謁見より先にこの地にいる妖精に挨拶に行く辺り、とてもディーらしいとサマラは思う。

この人工物だらけの王宮敷地内で一番自然が豊かなのが自然公園だ。公園と銘打ってるがほとんど天然の森で、さまざまな植物が自生している。奥へ進めば湖もあるらしい。
王都でも王宮敷地内でもほとんど妖精が見られないが、この自然公園だけは別だ。昔ながらの妖精が大勢残っているのだとか。魔法研究所が自然公園の森に埋もれるように建っているのも、納得である。

サマラを抱いてディーが研究所へやって来ると、働いている魔法官たちが驚きに目を剥いたあと「お、お帰りなさいませ、閣下!」と恭しく頭を下げた。
廊下を進むたびに誰しもが足を止め深々と頭を下げるの見て、サマラは内心(おぉ~、さすが最高責任者)と感心する。しかし肝心の本人は挨拶を返すことも足を止めて言葉を交わすことなく、黙って廊下を歩く。つくづく愛想のない男だと、今度は違う意味で感心した。

しかし。サマラは気づいてしまう、ディーが通り過ぎたあとに魔法官たちが好奇心の目を自分に向けていることに。

(ディーが妻に逃げられて血の繋がらない娘を育ててるって、みんな知ってるんだ……。国で一番の有名人だもんね、スキャンダルもすぐ広まっちゃうから仕方ないんだろうけど……)

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