転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
（ここを動いたらディーに叱られちゃう。……でも、ちょっとだけならいいよね。鈴と歌の正体を見たらすぐにここに戻れば）

フラフラと歩きだしたサマラを、木の枝に留まっていたフクロウが降下してきてすぐさま止めようとする。

「行くなサマラ！　ひとりで行くな！」

ディーの声色を真似てフクロウは咎めるけれど、サマラの瞳はぼんやりとしており耳に入っていない。

サマラは鈴と歌の主を求め、導かれるように森の中を彷徨う。
ハッと我に返ったのは、もはやどっちが出口かもわからないほど深く森に入り込んでしまっていたときだった。

「あれ？　私、何してたんだっけ……？」

キョロキョロと辺りを見回すと、見覚えのないところに立っていた。確か鈴と歌が遠くから聞こえてなんだか気になったところから、記憶がぼやけている。
すると、胸にかけていたペンダントからマリンが飛び出してきて、「サマラ！」と心配そうに手を握ってきた。

「マリン。どうしたの？」

「サマラ、魔法にかかってた。ピクシーの魔法にかかっちゃった。森から出られない」

「え……えぇっ！？」

マリンの言葉を聞いてサマラは青ざめた。大失態だ。
ピクシーは悪戯大好きの妖精で、人を森へ誘い込み何日も迷わせるという。
そういった悪戯好きの妖精は多いので、誘惑には決して耳を傾けてはいけないと、サマラは散々ディーに教わってきた。特に魔力の低い者は狙われやすいから気をつけるようにと。

「……やっちゃった～～」

サマラは両手で顔を覆って盛大に嘆いた。練習に集中せず、ピクシーの誘いに興味を持ってしまった時点で、サマラは罠にかかってしまっていたのだ。

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