転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
ディーの加護は強いけれど、それはサマラに対して向けられた悪意に対してだ。相手が妖精、しかもサマラ自身の意志で動いたことに対しては効力を発揮できない。

悪い妖精の誘いに乗らないことなど、魔法使いなら初歩の初歩だ。ディーもまさかサマラがピクシーに誘惑に載るとは思ってもいなかったのだろう。

「ディーが戻ってくるまでに帰らなくっちゃ! えーと……」

来た道を探そうとするけれど、もちろんさっぱりわからない。ピクシーの魔法の中にいるのだ、この森が本物か夢の中かもわからないし、自力で抜け出すことはまず無理だろう。

ピクシーは悪戯好きなだけで、人間の命までは取らない。攻撃もしないし食料も与えてくれる。ただ、迷ってオロオロしている人間を見るのが好きなだけなのだ。

「それはそれで悪趣味だわ……」

ブツブツ文句を言いながら、サマラは森を右往左往する。
ディーが気づいたらすぐに助けてもらえるだろうが、出来ることなら彼が気づく前に自力でここを抜け出したい。大魔法使いの娘がピクシーの罠にはまっただなんて、あまりにも情けなくて誰にも知られたくない。

しかし当然歩いても歩いても道は見つからず、他に協力してくれそうな妖精も見つからなかった。

「ねえ、マリンの力でなんとかならない?」

サマラの隣を飛び跳ねて歩くマリンに尋ねるも、「無理。サマラにかかってる魔法は僕にもかかってるから無理」と首を横に振られた。使い魔とはそういうものだ。

申し訳なくなりながら「巻き込んじゃってごめんね……」と謝って、サマラはトボトボと歩き続けた。


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