転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました
てっきりディーが助けに来てくれたものだと思ったサマラは、目の前に立っていた人物を見て「……誰?」とキョトンとした。

そこにいたのは小さな少年……いや、幼児だった。サマラと同い年くらいに見える。
黒髪の整った顔立ちはやけに冷静に見えて、少し大人っぽい。
しかしもっと気になるのはその格好だ。黒い外套に身を包み、手にはナナカマドの樹の杖を持っている。どう見ても魔法使いだ。

子供の魔法使いももちろんこの世界にはいるけれど、サマラのように未熟な者がほとんどだ。この国で黒い外套は大人の魔法使いの正装だし、杖はある程度魔力を持つようにならないと自分用の杖を持たせてはもらえない。

まるで大人の魔法使いのような恰好をしている大人っぽい雰囲気の男の子を、サマラは驚きの目で見つめていた。

「まさか……あなたが助けてくれた……とか?」

辺りにはディーどころか、他に人っ子ひとりいない。まさかとは思うが、聞かずにはいられなかった。
すると男の子はその大人びた顔に、ハッと小馬鹿にするような笑みを浮かべた。

「まあな。ガキがギャーギャーピーピー泣いててうるさかったから、優しい俺様が助けてやったんだよ。感謝しな」

端正な顔に憎らしい笑みを浮かべて言った男の子に、サマラは衝撃を受けたあと怒りと恥ずかしさで思わず食って掛かった。

「ギャーギャーピーピー泣いてないもん! それにあなただってガキじゃない!」

「『もうやだ~疲れた~助けて~パパ~ママ~』って泣いてただろ。それに俺をガキ扱いすんな。そんじょそこらの大人の魔法使いより、俺の方が強い。俺は一人前だ」

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