独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「どうしたの? なんだか難しい顔してる」
次の目的地に向かう途中、心配そうに聞かれ、嘘がつけない体質をどうにかしたいなあと切実に思う。
「海斗さんのご厚意に甘えていませんか? もしも恋人がいらっしゃるのなら、申し訳なくて」
これは聞かないでおこうと思ったのに、自分の気持ちを自覚してしまったら、知らないまま海斗さんの隣にはいられなかった。
海斗さんの恋人になるような人だもの。旅先の小娘に海斗さんが親切にするくらい、なんとも思わない寛大な彼女かもしれない。
それでも私自身が、恋人の存在を見ない振りをして海斗さんの傍にいられない。
「その『こうい』は、どちらの意味?」
「え?」
「いや、なんでもない。俺に恋人はいないよ。これで安心した?」
目尻を下げて言われてしまい、自分の気持ちはバレバレなのだろうなと恥ずかしくなる。
「だって、海斗さんみたいな男性に恋人がいないなんて……」
「それなら由莉奈ちゃんが立候補してくれる?」
「えっ」
驚いて顔を上げると、柔らかな笑みを浮かべる海斗さんと目が合った。
「冗談。ほら、昼飯に行こう。すごくおいしいところだから」
ぐるぐると悩んでいる間に目的地に着いていたようで、助手席を開けエスコートされる。