独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「由莉奈ちゃんの可愛い口では、ここのハンバーガーにはかぶりつけないかな」

「ふふ」と笑う海斗さんが憎らしい。口元を見られていたと思うと、恥ずかしくて熱い顔を覆った両手を外せない。

「本当に可愛いなあ。連れて帰りたいよ」

 はい。連れて帰ってください。今ならお値打ちですよ。

 そこまでの軽口は言えない。きっと本音が織り交ぜられ、冗談では済まないトーンで押し売りしてしまいそうだ。

「私を連れて帰ったら、大変ですよ」

「どうして? 傍にいてくれたら癒されそうだ」

 勘違いしそうになる発言をしないで。紳士な大人のリップサービスだとわかっているのに、胸がときめいてしまうから。

 質問はなんとなくはぐらかし、曖昧に笑う。

 注文したステーキは柔らかく、なにより海斗さんと食べる食事は格別だと感じた。
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