独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
宿泊しているホテルまではすぐで、石垣島が小さな島であることを残念だと思った。
「ありがとうございました。海斗さんのお陰で思い出深い旅行になりました」
「そう言ってもらえると、こちらも案内した甲斐があるよ」
優しく微笑まれ、上手く笑顔を作れない。
髪をかき上げる海斗さんは、私から目を逸らし困ったように呟く。
「参ったな。そういう顔をされると、離したくなくなる」
その横顔に胸が締め付けられ、思わず海斗さんに抱きついていた。
「由莉奈ちゃん?」
上擦った声が聞こえる。それでも体を離せない。
「まだ、帰りたくありません」
我がままを言ってはダメだとわかっているのに、気持ちは止められない。戸惑っていた両手は優しく背中に置かれた。
「うん。俺もだよ」
同調したのは、私を宥める為。わかっているのに、想いは止められなかった。