独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「東京に帰って気が向いたら、連絡して。昨日教えた番号は、普段使っている番号だから」

 そう告げて、今にも去って行こうとしているのがわかる。

 東京に帰ってしまっては、会えない。今の私では、海斗さんの横には並べない。

 ほんのひと時の旅の夢の続き。そして、これから、新しい自分に生まれ変わるために、今までの私とは違う『箱入り娘』の殻を破りたい。

「お願い。抱いてください」

 声は震え格好がつかない。今度は、顔を片手で覆う海斗さんが力なく言う。

「ダメだよ。その場の雰囲気に流されては。俺はなにも聞かなかったことにするから、部屋でゆっくりお休み。明日も石垣島を楽しんで」

 体の向きを変える海斗さんの腕を掴む。

「後生ですから」

 今にも泣いてしまいそうな声が出て「クッ」と堪えられないような短い笑い声を聞く。

「女の子に『後生ですから』なんて言われたことないよ。本当に面白い子だね」

 ふわふわと揺れる髪に触れ、優しく撫でられる。

「負けたよ。部屋に入ってもいい?」

 甘く囁かれた声に胸がキューッと縮む。小さく頷いた私の肩を抱き、部屋へと入った。
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