独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
今朝出た部屋と同じなのに、緊張で口から心臓が出ていきそう。
「シャワーを浴びておいで」
「はっ、はいっ!」
思った以上に大きな声が出て、また笑われる。
「ハハ。いい返事。湯船にも浸かるといい。ゆっくり入ってよく考えて」
「……帰ったりしないですか?」
不安げに見上げると、目尻を下げた優しい眼差しと目が合う。
「帰ったりしないよ。待っているから」
ドキドキと騒がしい鼓動を抱えながら、バスルームへ向かう。緊張し過ぎて何度もシャンプーをして、何往復も体を洗う。
『よく考えて』だなんて、どこまで大人なんだろう。海斗さんの優しさを噛み締めつつ、お風呂を出たらいないのだろうなと、どこか諦めにも似た心境でいた。