独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
部屋に戻ると同じ場所に海斗さんはいて、出てきた私に変わらない優しい眼差しを向けた。
「早くない? ちゃんとゆっくりしてきた?」
「はい。ダイジョウブです」
カタコトになって返事をすると、微笑まれる。
優しい。どうしよう。すごく好き。
「俺もシャワー借りていい?」
「はっ、はいっ。どうぞっ」
心臓が今までと比べ物にならないほどに早鐘を打ち、私の『お願い』が現実になりそうな状況を思い知らせる。
「俺が入っている間も、よく考えて。やっぱり無理と言っても怒らないから」
どこまでも紳士だ。その人を私は困らせているのかもしれない。
しばらくするとタオルを肩に掛け、髪から滴をしたたらせている海斗さんが私の前まで歩み寄る。
自然に横に流していた髪は、真っ直ぐに下りていてその少しの違いだけで、ますます色っぽく見える。存在だけで色気漂う海斗さんに挑んで、果たして生きて帰れるのかしら。
緊張は一周回って、間抜けな感想を浮かばせる。