独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「寝室に、行こうか」

 手を差し出され、ドキンと心臓がジャンプする。おずおずと出した手を掴まれ、寝室まで連れられる。

 ベッドの端に座らされ、ドッドッドッと全身が心臓になったみたいだ。

 私の前に立ったままの海斗さんを見上げると、「さあ。ベッドに入って。いい夢を見るんだよ」と子どもを寝かしつけるような口ぶりで促す。

「海斗、さんは……」

「いいから横になって。由莉奈ちゃんは寝た方がいい」

 ここまでお願いしても、受け入れてもらえないんだ。緊張ばかりしていたくせに、寂しさが込み上げてくる。

「迷惑、ですよね。ごめんなさい」

 消えそうな声が出ると、ため息が聞こえた。

「そんなわけないだろう。紳士であろうと、理性をフル動員している」

 本当かな。私を慰めるためのリップサービスかもしれない。

 ダメ元で目の前にある手を掴み、最後のお願いをする。

「旅の思い出に、素敵な夜を過ごさせてください」

 体を屈め頭をコチンとぶつけられ、窘められる。

「ダメだよ。女の子がそういうことを言っては。だいたい俺は、一夜限りにするつもりはない」

 近づいた首に、思い切って抱きつく。

「夢でいいんです」

 何度目かのため息を聞き、体がふわりと浮き上がる。

「夢だなんて思わせない。俺を忘れさせない」

 抱きかかえられた後ベッドに押し倒され、上から見下ろされるとゴクンと喉が鳴る。
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