独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい
「あの、こういうときって、朝起きたらどちらかが姿を消しているというのが定説なのでは」
爽やかな顔をして、私の前に座る海斗さんに物申す。朝食は部屋で取ろうと、ルームサービスを頼んでくれた彼と食事を囲んでいる。
「ハハ。ドラマの見過ぎ。話しておきたいことがあったから」
前置きをされ、身構える。すると思ってもみなかった、けれど自分の違和感の答えを聞いた。
「赤ちゃん、ほしいんだよね?」
「えっ。それは、その、はい」
「昨日の行為はそういう行為だって、さすがに知っている?」
「それは、もちろん」
しばらくの沈黙。
この期に及んで、お説教?
「俺との子は、どう?」
「え……。それは、どういう」
困惑していると、真っ直ぐに見つめられ告げられる。
「避妊しなかった。わざとだ。こういう悪い男もいるんだよ? 身をもって知れたね」
変わらず優しい声色なのに、どこか挑戦的に言われ息を飲む。
「どう、して……」
「俺は由莉奈ちゃんに手を出すのなら、そのくらい真剣だと伝えたかった」
真っ直ぐに見つめられ、目が逸らせない。その視線を外したのは、海斗さんの方だった。
「ただ、この件については、俺の独りよがりな想いだけじゃ、無責任だとわかっている」
そこからアフターピルという薬があり、48時間以内に飲めば、避妊の効果がある旨を教えられた。石垣島にも産婦人科はあり、空港に行く途中に送り届けるつもりがあることも。