独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 今日は会えない海斗さんに想いを馳せ、昨晩を思い出し赤面して身悶える。

 そんな乙女な1日の始まりのはずが……ううん。今でも十分夢見心地だ。

 一夜の過ちを犯した相手に産婦人科まで送られるという、メルヘンな要素はどこにもない状況なのに、夢見心地なのだ。今日も僅かでも海斗さんといられることが嬉しい私は、もう末期症状かもしれない。

「送っては行くけれど、俺はそのまま妊娠してくれた方が嬉しい」

 夢見心地に感じるのは、臆面もなく言い切ってしまう海斗さんを、どこか現実に思えないせいかもしれない。

「本当は、診察まで一緒に、というよりも、このまま東京に連れて帰りたいのが本音だけどね」

 産婦人科の駐車場で降ろされ、今度こそさよならだ。

「東京に帰ったら、連絡がほしい。待っているから」

 そう言い置いて、車を発進させた。
 私はなにも言葉が返せなくて、黙っていることしかできなかった。
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