独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 就職先について、父はもうなにも言わない。一人暮らしも交渉しているけれど、それはなかなか了承を得られないでいる。

 そんなときこそ、海斗さんからもらったメモ用紙を眺めて奮起する。

 それは父の意向とは関係なく、自分自身で考え動いた証。痛い勉強料を払ったかもしれないけれど、確かに父の力の及ばない場所で、自分の気持ちに正直に過ごした。

 だから私は大丈夫。今後の人生、自分で選んでみせる。村岡物産の娘だからという立場ではない、ひとりの由莉奈として。

 仕事を終え、自宅に戻ると「話があるから書斎に来なさい」と父に告げられ、顔を出す。

 書斎に入ると「今の職場はどうだ」など、当たり障りのない話をしてから、本題を話された。

「由莉奈に縁談がある」

「お父様。私はもう……」

 海斗さんに連絡はしていない。まだ出来ない。いつか、彼に恥じない自分になれたらと思っているから。

 海斗さん以外は考えられない。例え、海斗さんと結婚出来ないとしても。

「これは会社も絡む話だから、会うだけでも会わないと相手方に面目が立たないのだよ」

 こう言われてしまうと断れない。会うだけならと、渋々会食に行く話を飲んだ。

 会社が絡むというと政略結婚? どうして今さら、政略結婚を勧められるのだろう。

 そもそも前の婚約者は、ごく一般の人だ。ただ勤務態度が真面目な青年、というイメージなだけ。
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