独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 ゆっくり目の時間からだった会食でお互いにお腹は空いていないため、『早めに休もうか』と促され寝る準備をする。

 料亭で押し問答をしていたせいもあり、今は午後8時。眠るには早い。

 押し切られる形で寝室を共にする事態に陥りそうで、どうにか回避する方法を思案する。

 先に入ったお風呂。寝たフリも考えたけれど、自分が狸寝入りの演技が上手いとは思えない。

 広過ぎるリビングは、別世界にいる事実に直面して不安を駆り立てる。

 ソファは座るだけで、体格差を思い知らされる。足がつかないのだ。スタイルが良く手足が長いと自慢されているみたいで、ソファにさえ嘲笑われている気がする。

 仕方なく体を丸め、端に小さくうずくまる。

 そのうち、狸寝入りではなく本気で眠ってしまったらしい。演技ではないから不自然ではない。

 夜中、心地よい揺れを感じながら「また笑い合える日が来るよな?」と、少し寂しくなるような声を聞いた気がした。
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