独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

「素晴らしい考え方だと思います。海斗さんに選ばれる女性は幸せですね」

 海斗さんとなら私が夢見ていた通りの、対等な関係を築けるだろう。一緒にキッチンに立ったりして……。

「幸せ、感じている?」

「……え?」

 理解が追いつかなくて、ぽかんとしていると苦笑される。

「ま、追い追い実感すればいい。疲れただろう? 湯を張ってこよう」

 話し合いは有耶無耶のまま、終わってしまった。残されたテーブルで、力が抜けてその場に突っ伏す。頬にほどよく冷たい木の感触が伝わる。

 どうせ父の持ってきた話を無下にできない。だから全てを終わらせるために、この同居を受け入れた。

 近くにいて海斗さんの思惑を知れば、きっと幻滅できる。暴いてしまえば、この関係は破綻する。

 それはお互いに言えること。

 胸の奥に痛みを感じながら、心の中で何度も唱えた。「それまでの辛抱よ。それまで、だけ」と。
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