独占欲強めな副社長は、政略結婚で高嶺の花を娶りたい

 数人いたお客がいなくなると、先輩の浅見さんから声をかけられる。

「由莉奈ちゃんのお陰で助かったわ〜。英語、話せるのね」

「はい。日常会話程度なら。でも、和菓子の奥ゆかしさを伝えるのは、どうしても難しくて」

 浅見さんはおおらかに笑う。

「日本語の話せない人に和菓子の奥ゆかしさまで伝えようとするのは、さすが由莉奈ちゃんね。さきほどのお客様はよく来店くださるんだけど、買われたのは初めてよ」

「そうだったんですか」

 英国の紳士という雰囲気の男性だった。とても聞き取りやすい綺麗な英語。仕事で日本にいる人なのかもしれない。

「日本語は少しわかるみたいで、私たちも和菓子の良さを伝えてはみるんだけどね。『ありがとう。またにします』って、買われた試しがないのよ」

「だから由莉奈ちゃんお手柄ね」と言われると、気恥ずかしいものの、日本の古き良き伝統を発信したいというコンセプトのあるここ『川瀬』で、少しでも役立てたのなら誇らしい。
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