ねえ、私を見て
すると夫が壁に私を押し付けた。

「なに?」

「何って、妻の身体に障りたいと思うのは、当然の気持ちだろ。」

夫が私の体に欲情している。

少し前までの私なら、喜んで夫の気持ちを受け入れていただろう。

「ごめんなさい。私、疲れていて……」

「何もしなくていいよ。」

夫は私にキスをし、身体を愛撫し始めた。

「待って、お願い!」

私は無造作に、夫を抱きしめていた。

私の耳元で、夫が息を切らしている。

「なんで?何でダメなんだ?」

夫の発言に、ドキッとする。


そうだ。

なんで私、ダメなんだろう。

日奈人君がいるから?

夫よりも、日奈人君に操を立ててるの?


「そうよね。可笑しいよね、私。」

そう言って私は笑った。

「ははっ……ははは……今さらって感じ?」
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