ねえ、私を見て
「ううん。」

私と夫は、そのまま座り込んだ。

「本当に、疲れているだけよ。ごめんね、要ちゃん。」

夫はうんと頷くと、ふらっと立ち上がり、脱衣所を出て行った。

そして私はと言うと、はぁーっとため息をつき、お風呂場に行った。


シャワーの音がする。

そう言えば、日奈人君とセックスする時は、終わった後に浴びていた。

自分の不貞行為を、洗い流すように。

「ふっ……」

夫はなんで、今日に限って、私に欲情したんだろう。

いつもは、私の裸を見ても、何にも感じない人だったのに。

「どうして……」

涙が出て来た。

もう少し早く、私に欲情してくれたら?

私は日奈人君と、一線を超えなかったかもしれない。

どうして?今になって?


私は、シャワーを浴びながら、涙にくれた。
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