ねえ、私を見て
園子は、その後無言で自分のデスクに戻ると、カチャカチャとキーボードを叩き始めた。

その無言の圧力に、私の肩が重くなった。

「あのね、園子……」

「おはようございます。」

園子に言いかけた時に、日奈人君がオフィスに来た。

「おはよう。」

いつもと同じように、園子は日奈人君に挨拶をする。

ただ一人、うろたえる私がいた。

「どうしたんですか?澤田さん。」

自分が出勤する前に、自分と私との関係を、園子に尋ねられているとも知らずに、のん気に声を掛けてくる日奈人君。

「……何でもない。」

そう答えたのは、果たして親切だったのか。

とにかく私は、若い男の子と関係を持った事を、自分だけの秘密にしておきたかった。

「今日の仕事はっと……あっ、この前の女の子、また執筆してくれていますよ。」
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