ねえ、私を見て
だって、日奈人君のおかげで艶っぽくなったのであれば、それを向けるべきは、夫ではないような気がする。

「どうしたの?暗い顔してる。」

「ううん、何でもない。」

暗い顔。

私、日奈人君の事考えているのに、暗い顔をしている?

「今度、どこかの温泉にでも行こうか。」

「えっ……」

「疲れているんだよ、くらら。温泉にでも浸かれば、疲れも吹っ飛ぶって。」

「うん。」

夫と二人で温泉。

本当は喜ぶべきなんだろうけれど、素直に喜べない。

温泉で、夫は私を抱くのだろうか。

そして私は、それに応じて、夫に抱かれるのだろうか。

子供のいない二人にとっては、チャンスなのに。

「酔っぱらった?」

「うん。ちょっとトイレに行ってくる。」
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