双子の異世界・金色のはなびら
しんしんと雪が降る。

国王に側室の話を伝えられてから1カ月が経った。

ついにエレノアが国を出ていく日が来てしまった。




「お父様、お兄様、リーネ、お元気で…」

真っ白な雪景色にイエローと銀の糸で花をあしらったドレスを着てエレノアが言った。


「お姉様、これを」

凍えないようにと妹リーネがエレノアの為に自分の手で作ったウサギの毛皮の暖かいフードをプレゼントしてくれた。

「リーネ、ありがとう」

「エレノア。そんな顔するな、今生の別れではないのだから」

国王が寂し気に名を呼んだ。

「そうだ、気分転換に年に一度でも帰ってくればいいさ。それに俺はドルーアに行くことが多いだろうからあっちでも会える」

「はい・・それを聞いて少し安心しました」

兄は子供の頃の様にエレノアの頭をぽんぽんと勇気づける様に撫でた。

「お姉様ならきっと幸せになれます!だってリーネはお姉様の笑顔が大好きだもん。その笑顔があれば皆お姉様の味方についてくださるわ!う・・グス・・本当はもっとずっと一緒に・・いたかったでずげどぉ・・」


妹が泣きながらそう言った。


「うんうん、私もよ・・グス・・ありがとう」


エレノアも涙が止まらなかった。


17年間、ずっと安全に暮らしてきたこの国から自分は今飛び立とうとしている。

何が待ち受けているのかわからない恐怖との戦いが始まる。

城の門にある大きなかけ橋には、城に使える大臣や兵士や小姓達が総出でエレノアの乗る馬車を送り出す為に待機している。


「エレノア様、ご出立ーーー!!!」



大臣の掛け声が上がり、エレノアを乗せたゆっくりと馬車が動き出す。



_お父様!お兄様!リーネ!!!


お元気で。


本当は・・



行きたくない!!!


行きたくないよ!!!


嫌だ!!!




エレノアは震える唇を噛みしめ、馬車に揺られながら窓から見える城を見えなくなるまで見つめていた。



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