双子の異世界・金色のはなびら
ゴトゴト、ガタガタ・・。

馬車が揺れる。

途中馬を代えたり、食事休憩などを取りながら馬車はドルーア帝国を目指す。

出発してから三時間。

「ぅー。腰が痛くなってきた」

ずーっと揺られている。疲労は隠せない。

「あぁ、やだな怖いな」


エレノアの涙は止まっていたが、代わりに不安が止まらなかった。


「皇帝ってどういう人なのかな?そもそもお父様も私になんの情報もくれないでそのままほうり出すなんてひどすぎない!?どんな人なのか知っていれば多少気持ちも楽なのに!
うう、怖い。もう帰りたい!本当に嫌だ!やっていける気がしないー!」


やけくそなので愚痴り散らし大きくため息をついたその時だった。


「姫様、心の声が駄々漏れですよ」

「!?」


馬車の窓の外から聞き覚えのある声がした。

「ゼノ!?」

「失礼しまーす!」

ひょいっと窓から馬車に乗り込んできたのは、エレノアの世話係件・側近兵のゼノだった。


「え?ゼノ・・なんでいるの?」

「え?なんでって、俺あなた様の側近を5歳からやってるんですけど」

「だってお父様が一人で行けって言ってたし・・ゼノはもともと城の兵士だから当然来ないと思ってた」


ゼノはエレノアが幼い頃からの側近兵だ。カラカラとした性格の同い年である。

幼馴染の様な、きょうだいの様な存在だ。


「あ、姫様が要らないっていうんなら全然帰りますけど」

「いる!いります!いなさい!バカッ」

「バカは余計じゃないですか?傷つくなー」

「よ…よがっだぁーぅぅぅ」


枯れ果てたはずの涙がまた滝のように流れた。

「あーっ!もう泣かないで下さいよ!化粧も全部落ちてるし、まぶたパンパンじゃないですか!わははっ」

「笑うなぁーーー!!!」


「はいはいっ」


ーなんて、なんて心強いんだろう。ゼノが側近で本当に良かった。ていうか、ついて来てくれて良かった。


張り積めていたものが一気に消えた。

安心したのか、泣き止んだエレノアは急に眠気に襲われそのまま眠り込んでしまった。


「安心してください。俺がしっかり守りますから」


ゼノは微笑むとエレノアに毛布をかけ、また外へと出ていった。


< 7 / 49 >

この作品をシェア

pagetop