その手をぎゅっと掴めたら。

生温い風を背に受けながら、校門をくぐる。

昨日のデートはとても楽しかった。
だからこそ勝たなければいけない。

ゆっくり眠っていられなくていつもより早く誰もいない教室に着いた。
1限目は英語。テストが返却される日だ。


できる限りのことはしたし、今更焦ってもどうにもならないよね。でも落ち着かない…。

教室後方にあるロッカーに寄りかかり、試しに深呼吸でもしてみるか、と息を吸った時、


「おはよー」

はい?ーー突然、廊下から響いた声に驚いてしまった。


「昨日、北斗とデートだったの?」


明るめの声でそう話しかけてきた生徒会長こと、新山さくらさんは身軽な動きで教室に入ると机に座った。


短めのスカートから覗く美脚を組んで座ったその机は、葉山くんの席だ。


これは牽制なのだろうか。

一度も話したことのない相手を前に、この場から逃げ出したい衝動に駆られる。

私はそうやっていつも逃げてきたから。


< 102 / 311 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop