その手をぎゅっと掴めたら。

私が嫌い、もしかしたら本当の理由はそれなのかもしれない。


だってさ、昨日も手を振り払われたじゃん。

嫌いな相手に対しての行為だと思えば、不自然じゃない。



「葉山くん、私も一言だけいい?」


「どうぞ」


「私は葉山くんのことが、大好きだよ」


「……」


嘘告白から始まった恋。
酷い結末だとしても、自業自得だ。


「……君の気持ちに応えられなくて、ごめん」


優しくなった声色に、泣きたくなる。


彼にすがりたい、でも迷惑はかけたくない。


「分かった。葉山くんがそう言うなら、別れよう。今までありがとうございました」


もう葉山くんの顔は見られなかった。

別れ話を切り出されて、泣き顔を見られることは不本意だから。

無理矢理に身体を動かして、病院に駆け込んだ。

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