その手をぎゅっと掴めたら。
私…?
「最近思うんだ。弱虫だって君に嫌われても、例え君が別れたいと言っても、それでも佐野が生きてさえいてくれれば、俺はそれで良いんだって。…だから俺はあの道を渡らない」
私を見る葉山くんの瞳は真っ直ぐで、迷いがなかった。
親友を失った交差点に再び足を踏み入れたからってまた新たな犠牲者が出るはずないと、葉山くんも頭では分かっているはずだ。それでも悪い方向にしか考えられないのは、過去の体験が彼を脅かすのだろう。
そうまでして強引に葉山くんをさの喫茶に連れていく必要はないんだ。
ねぇ、青山さん。もういいよね。
青山さんのこと、話しても、いいよね。
「あのね、はやま…」
突如、風が吹き荒れて、道を囲む木々たちが大きく揺れる。パサパサと葉が落ちる音と、空き缶が転がる音がした。
「風が強いね」
「…そうだね」
言うな、と青山さんに止められた気がした。
そうだ。青山さんはおじいちゃんに頼めばいつでも葉山くんをさの喫茶に連れて来てもらうことができたんだ。それでもそうしなかった青山さんの意思は固いのだろう。
私の口から告げることは裏切りに他ならない。