和菓子が繋ぐラグジュアリー。

 しかも、さらに届け先は、このベリーヒルズビレッジを
創立した華京院財閥の社長様にだ。
 そこの社長・華京院蓮(かきょういんれん)様は、
御曹司なだけではなくかなりのやり手実業家でも有名だ。

 有名大学を首席で卒業し、副社長として入社して
26歳の時には、社長を就任。現在29歳。
 自分や他人にも厳しくいろんな企業を成功に導き
華京院財閥をさらに上に押し上げた。
 そのため日本で彼に逆らうものは、容赦なく
蹴落とされるとも噂になっていた。
 つまり私が失敗したら、この如月店が潰されてもおかしくない。

 絶対それだけはダメなのに……。

「はい。これが頼まれた茶菓子よ。
 じゃあ華京院様によろしくとお伝え下さいね」

「わ、分かりました。全力で頑張ります」

何をどう頑張ればいいのだろうか?
とにかく失礼がないようにしないと……。
 いや。その前にそんな相手を新人の私に任せて
本当にいいのかしら?

 女将さんの真意がよく分からない。
恐怖に感じないなんて……ある意味恐ろしいわね。

 しかし断る勇気もなく私は、トボトボトと茶菓子が
入った包みを受け取るとお店から出ていく。
 ハァッ……ため息しか出ない。

とりあえずオフィスビルに向かった。
 オフィスビルは、テナントから道路を挟み隣にある。
なんて大きいビルかしら……。

58Fもある巨大ビルだ。屋上は、ヘリポートになっており
 展望台に会員制VIPラウンジや高級レストラン
しかもホテルまであるらしい。もう別世界のビルね……。

 恐る恐るビルの中に入ると受け付けのフロントに
お届け物のことを伝えた。すると受付嬢の人に
48Fにお越しくださいと言われる。
 ここで渡して逃げたいがそれだと失礼だ。
仕方がなくエレベーターまで向かった。

 待っている間に周りを見渡すが、さすが
働いている人達は、セレブばかりだった。
 高級な腕時計やスーツを着た男性や綺麗に着飾った
美人なセレブ女性まで居る。
 何だか自分が浮いた存在なような気がして怖くなってきた。

 私なんて……女将さんから借りた着物を着ているが
地味でパッとしない方だ。
 もし今の自分を見て笑われたら恥ずかしい……。

するとエレベーターのドアが開いた。
 私は、緊張しながら乗り込むと48Fまで上がる。
48Fになったので出るが、うわぁーと驚いた。
 高級感のある造りで、広いオフィスが透明のガラス越しから見えたからだ。

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