政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

そう言って理仁は、抱きすくめた菜摘の頭頂部にやわらかなキスをひとつ落とした。

次から次へと予想外の展開ばかりで声も出せない。


「ここは予約だ」


理仁は、引き離した菜摘の唇に親指でそっと触れた。


「唇にキスするまでにキミはきっと俺を好きになる」


予言めいた言葉はまるで呪文のよう。
なんて身勝手で自信満々な宣言なのか。意味深に微笑む彼を見ていられず、ぎこちなく目を逸らす。うっかりそのシーンを思い浮かべる想像力の豊かな自分が恨めしい。

理仁は「じゃ」と、再びひらひらと指先を揺らした。

菜摘は、魂を抜かれたように立ち尽くした状態。彼が去り、玄関の引き戸が閉じられても、しばらくそこから動けなかった。

数分後、思い出したようにトボトボと座敷に戻ると、一緒に話を聞いていた大地が心配そうな顔で菜摘を待っていた。
少し癖のあるやわらかそうな髪に中性的な顔立ちをした大地は、姉の菜摘と双子並みに瓜ふたつの大学四年生。黒縁スクエア型のメガネをかけているが、それを外した顔はまさしく菜摘のコピーだ。
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