政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「心配するな。倒れたキミを運んだのは俺だけど、発見した美代子さんがきちんとバスタオルでくるんだから」
「そう、でしたか……」
やはり美代子が菜摘を運べるわけがないのだ。いくら力持ちでも無理がある。
理仁に裸を見られていないようでひとまず安堵したが……。
「大地くんが女性だったと美代子さんは大慌てだったよ」
「すみません。……でも、私が菜摘だとわかったのに、どうしてなにも言わなかったんですか?」
翌朝、菜摘を問い詰めてもよさそうなものだ。
「キミが菜摘さんだってこと、この前の夜知ったと思ってる?」
「えっ、そうじゃないんですか?」
もっと前から知っていたというのか。ギョッとして理仁を見つめる。
「佐々良家に迎えにいったときにはもう」
まさか最初から気づいていたなんて思ってもみなかった。あまりにもびっくりして言葉が出てこない。