政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

とうとう白状してしまった。いつかいつかと思いながら、ここまで一週間。自分でもよく変装していられたと思う。
結局、理仁に後ろ暗いところなど微塵もなく、ただただ紳士的な態度に翻弄され通しだった。

ところが、顔を上げて見た理仁の顔は怒っているようには見えず、ましてや驚いてもいない。菜摘が正体を明かしたというのに、だ。なぜか穏やかな笑みを浮かべて菜摘を見つめている。


「……怒ったり驚いたりしないんですか?」
「怒っても驚いてもいない。全部、キミなりに考えてしたことなんだろう?」


正体を知っても冷静な態度を崩さない理仁に違和感を覚える。


「もしかして、この前の夜」


菜摘はハッとして両手で口を押さえた。
美代子が運んだと言っていたが、本当は理仁なのではないか。バスルームで倒れた菜摘を見て、大地でないと知ったのかもしれない。

(それじゃ、日高さんにすべてを見られちゃったの……?)

カーッと顔が熱くなる。恥ずかしすぎて今すぐここから逃げだしたい。
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