政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
ハウスの側面部分は、ビニールがめくれ上がらないようにパッカーという器具で固定した。
昨年の被害を考えれば、ハウス内部を筋交いのパイプで補強したいが、菜摘たちにその技術はない。
ハウス周りに置いたままになっている農業用器具や資材はすべて収納し、風で飛ばされるものを極力減らした。
真夏のハウス内は過酷な暑さ。拭いても拭いても汗が止まらない。
すっかり夜になっていることに気づいたのは、できうる限りの作業を終えたときだった。熱中していたため、あたりが暗くなっているのにも気づかなかった。
「あぁ、終わった……!」
大地がその場で崩れるようにしゃがみ込む。
「終わったね」
菜摘も肩で大きく息をして、へなへなと座り込んだ。汗だくだし、力仕事でヘトヘトだ。
「とりあえず、これで大丈夫そうか?」
「どうかな。台風の規模にもよるけど」
進路が海の方向に変わるか、温帯低気圧に変わるのが一番だけれど。とにかく被害が最小になるのを祈るだけだ。
「神様、頼む! ハウスを飛ばさないでくれ!」
大地は夜空を仰ぎ、両手をパンパンと叩いて神頼み。
やれるだけのことはやった。あとは神様に願う以外にないだろう。大地を真似て、菜摘も夜空に祈った。