政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
◇◇◇◇◇
実家でシャワーを浴び、座敷でひと息ついてふと思い出す。
(そうだ。日高さんにも美代子さんにも連絡を入れてなかったっけ)
壁掛け時計を仰ぎ見て焦る。まもなく九時なるところだった。
慌ててバッグを漁りスマートフォンを取り出したら着信履歴は十件。どれも理仁からの連絡だった。
「わわ、これはまずいよね」
いつもなら運転手付きの車でここへ来ていたが、正体を明かしたこともあり今日はひとりで電車移動。作業を始める前に一本連絡を入れておけばよかったと後悔だ。
すぐに折り返して電話をすると、ワンコールも鳴らないうちに理仁が出た。
「ごめんなさい!」
彼が応答するより早く謝る。
『今どこ?』