政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「やだなぁ、ニヤニヤしちゃって」
「ニ、ニヤニヤなんて!」
郁子に突っ込まれ慌てる。
「してるよ。顔中の筋肉がダラーンと伸びきってる」
「伸びてません」
必死に表情を引きしめるが、唇の端が引きつった。
「いいねぇ、幸せオーラ満開だ。眩しいったらありゃしない」
「やめてってば」
からかわれると、どんな表情をしたらいいのかわからなくなる。
菜摘たちがそうして盛り上がっていると、ふとテーブル脇に人影を感じた。つられて顔を上げたら、そこにはミレーヌのチーフパティシエ。この前理仁に紹介されたエリカが立っていた。
「いらっしゃいませ」
凛とした空気をまとい、菜摘に笑いかける。純白のコスチュームが目にも眩しい。