政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「収穫後の株を片づけたら、次の定植に向けて太陽熱で殺菌処理します。あ、定植というのは、苗として育てていたものを本式に植えつけることをいいます」
「ここから切り取ったランナーは?」
「ハウス棟の奥にある小屋に運んで花芽を付けさせていきます」
ひとつひとつの質問に丁寧に答え、説明を付け加えていく。
これから契約をする大切な取引先のため、和夫の言うようにしくじるわけにはいかない。緊張感を保ちつつ、心を落ち着かせた。
高温のハウスから出ると、三十度以上あるのに外気に涼しさを感じる。
理仁はハンカチを額にあてながら空を仰いだ。
真夏にスーツをしっかり着込んでいるというのに暑苦しさを感じさせないのは、内面から滲み出る爽やかさのせいなのか。汗を拭う仕草ですら決まって見える。
「四季成りイチゴの品種改良に成功したそうだね」
そんな話まで知っているとは思いもしなかった。どこからか聞いたのだろうか。
「そうですね。品種登録を待っている段階です」
「それはどこで栽培を?」
「あちらです」