政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
少し離れた場所にあるハウスを手で指し、理仁に振り返って案内しようとしたときだった。足もとの小さな段差に踵が引っかかり、体が後ろに傾く。
「きゃっ」
思わず声を上げると同時に理仁に腰をぐっと引き寄せられた。思いがけず抱きしめられるような体勢になり、鼓動が大きく跳ねる。ふわっと甘く優しい香りに包まれた。
「大丈夫?」
笑みを含んだ声で聞かれ、頬が紅潮する。
「だ、大丈夫です。すみません」
そそくさと離れ、理仁の顔も見ないまま頭を下げた。
そそっかしい自分が恥ずかしいのと、抱きしめられたときの理仁の腕の感触にドキッとさせられたのとで頭の中は麻痺状態。
(これなら転んだ方がよかった……!)
動揺を誤魔化そうと俯いたまま彼に背を向ける。