政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
もっと恋愛にも目を向けた方がいいと会うたびに言われるくらい。祖父の和夫もその点は心配らしく、デートする相手はいないのか?と年がら年中質問される。
恋愛は大学時代にたった一度だけの乏しい経験値。二股された揚げ句に振られた情けない過去だ。それもこれもイチゴが頭の大半を占めているせいなのだけれど。
「それだけ好きなものがあるのは素晴らしいと俺は思うけど」
「……そう、でしょうか」
「なにかに夢中になれるほどの情熱があるってことだろう? 魅力的じゃないか」
いきなり間近で見つめられ、どうしたらいいのかわからなくなる。菜摘は自信に満ち溢れた眼差しを受け止めきれず、サッと視線を逸らした。
意味深な発言の自覚は、きっと理仁本人にはないだろう。
(やだな、べつに私のことを魅力的って言ってるわけじゃないのに)
鼓動の乱れを必死に食い止める。
「じゃ、悪いけど借りるよ」
理仁は受け取ったペンのヘッドをカチッと鳴らした。