政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
その中でもひと際目を引く美女がいた。体にフィットした真っ赤なイブニングドレスを着たスレンダーな女性だ。長い髪は緩やかに揺れ、目もとがキリリとしている。取引先の招待客なのかミレーヌの社員なのかはわからないが、とにかくとても美しい。
菜摘はそういったパーティー仕様のドレスを持っておらず、亡くなった祖母が大事にしていた着物を借りて着てきた。やけに視線を感じるのは、ほかに和装の女性がいないせいだろう。
祖母は着物が大好きだったため、遺しているのも京で有名な染元のものが大半。菜摘が着てきたのは薄クリーム色を基調にした上品な絹地に、牡丹や桔梗などが伸びやかに描かれたものだ。
着物を着ているのと緊張するのとで背筋がピンと伸びる。
いつも作業着姿の和夫も今日ばかりは一張羅のスーツを着ており、自分の祖父ながらカッコいい。
ビュッフェスタイルのようで会場の左サイドには和洋折衷の料理が並び、出席者たちは思い思いに好きなものをとって歓談していた。
「菜摘、なにか食べようか?」
「ううん、大丈夫」
帯をきつく締めているためか空腹は感じないし、慣れない雰囲気で食べられる気分でもない。
「おじいちゃんはどうぞ」
「じゃ、遠慮なく行ってこようかな」