政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
さらにグイとペンを彼に近づける。ボールペンとでは格差がありすぎる。
彼が使うような万年筆なら高級品だろう。どうりで上質な指触りと重みがあったわけだ。
「一度手渡したものを引っ込めるなんて真似はできない。みんなの前で恥をかかせるつもり?」
言われて周りを見ると、菜摘たちは注目の的。一身に視線を浴びていた。
でもそれもそうだろう。なにしろ今日のパーティーの主催側であるミレーヌの専務がここにいるのだから。しかも目にも麗しい容姿の持ち主。見ずにはいられなくて当然だ。
相手をしている女性は誰?といった、菜摘へのちょっと冷ややかな視線も紛れている。
ここで〝いる、いらない〟の押し問答をするのは、かえって目立ってしまう。
「……では、いただきます」
いったん受け取っておいて後日、和夫を通すなどして返そう。この前彼が従えていた秘書を探して、パーティーが終わる前に返してもいい。
「言っておくけど、あとで返却するのはナシだから」