政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
理仁が顔を近づけて、菜摘の耳もとで釘を差す。なんて鋭いのか。
ドキッとして一歩飛びのいたら通りすがりのウエイターにぶつかりそうになり、今度は理仁に手をぐいと引き寄せられた。瞬間、「いやー!」という悲鳴にも似た声が近くからあがる。理仁に接近したためにほかならない。
さっと彼から離れ、「すみません」と謝る。危うくトレーに乗った飲み物をこぼすところだった。
「キミは本当にイチゴが好きなんだな」
なんの話かと目を瞬かせていたら、彼の視線が菜摘の帯付近に落ちる。
「あ、これは……はい、そうですね」
着物は祖母のものだが、帯だけは買い足したのだ。菜摘の大好きなイチゴ柄を見つけて即決だった。
「よく似合ってる」
眩しいものでも見るかのような目で言われ、頬がカーッと熱くなる。
「ありがとうございます」