政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
口から出たお礼の言葉は、思いのほか小さなものだった。
「専務、そろそろお時間です」
不意にかけられた声の方を見たら、例の秘書が両手を前で揃えてかしこまっていた。
「わかった。じゃ、菜摘さん、また」
秘書に答えてから菜摘に笑いかける。あまりにもキラキラしていて目のやり場に困った。
彼が立ち去った後、ふうっと息を吐いて肩から力を抜く。体中に力が入っていたらしい。
(日高さん、なんだかちょっと苦手だな。緊張して疲れちゃう)
余裕のある振る舞いは、菜摘との格の違いをまざまざと見せつけられるようだ。住む世界が違う人は、話すだけで体が強張る。
「ずいぶんといい雰囲気だったじゃないか」
和夫が料理を手に戻った。皿には握り寿司やサーモンのテリーヌが乗っており、とてもおいしそうだ。
「やだ、おじいちゃん、見てたの?」