政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
見た目はもちろん味も抜群なミレーヌのスイーツはたびたびテレビや雑誌で取り上げられ、女性たちがこぞってSNSなどで紹介している。特にオーダーメイドのロールケーキは予約でも待たされることが多いと聞く。
そんなスイーツに劣らず話題になるのが、理仁本人である。三十二歳の若さで父親から引き継いだミレーヌを急成長させている手腕と、類まれなる容姿は注目の的。世の女性が放っておかない。
違う世界に生きていると言ってもいいような理仁からいきなり突拍子もない話をされ、菜摘の頭の中は大混乱。縦横無尽に道路が行き交う首都高のように、思考があちこちと走って一向にまとまらないときている。
パティスリーならば、イチゴはショートケーキやタルトなどなにかにつけて使う商材だろう。でも、取引先は佐々良だけではないはず。
(うちがダメなら、ほかの農園だってあるのに)
佐々良に固執する理由がわからない。菜摘が借金のカタになるとは思えないのだ。
「この一ヶ月、こちらでも農園の経営状況や畑の運用について、佐々良さんが提示してくれた資料をもとに協議を重ねてきた」
理仁は、うしろに控えている秘書風の三十歳前後の男からクリアケースを受け取る。そこから何枚か重なった用紙を取り出して菜摘の前に差し出した。